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貴方に届くはいつの日か
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ヘタレなレイモンドをなんとなく書いてみたかったんです。

レイモンドって誰?
って言われても困ります(え)
ひょっこり降臨なさった登場人物でして、世界観は微妙です。

短編に置こうかともと思ったけど、まったく脈絡ないし、世界できてないし、これはこれだけで終わるだろうなという予感のもとブログに乗せました。
Web拍手って場所も考えたけど、ちょっと長いし。

ええ~。珍しく恋愛。ファンタジー。指定なしですが、今後書くことがあると、多分指定ありになりそうな雰囲気。
とある学園の成績優秀な二人という設定。
年齢は~勢いで書いたので未定。でも十代かと思われ。

やるきのない紹介だ。
読みにくいかもしれませんが、読んでくれると嬉しいです。

読みやすくしてくれというご要望があれば、拍手などからどぞ。



  

「あら、いたのね」
日当たりの良いソファーに不貞寝をしているところに声がかけられた。声の主は良く知っている。ついこの間までは常に行動をともにしていたのだから。
「レイモンド? 寝てるの?」
小さく一つ息が落とされた。しばらくすると近くの本棚から出し入れする音がする。
うっすら目を開けて盗み見ると手に持った本を棚へ戻しているところだった。深紅の制服の背に明るい栗色が揺れている。背中の半ばくらいの長さを、今日は一括りにしている。彼女がそうしている時は仕事に借り出された時と決まっていた。
学生身分の見習い呪法士ではあるが、実力に応じて実技と称して仕事に借り出される。仕事といってもいろいろとあるが、成績上位の学生は大概「闇狩り」と呼ばれる仕事に参加させられる。
当然ただの手伝いであるが、危険度が高いため二人一組でパーティーを組まされる。組まされ方は上から順になることがほとんどで、今期も成績一位だった彼女、エリスは二位の奴と組んでいる。
そうなのだ。今期エリスは俺ではなく別の奴と組んでいるのだ。不貞寝の原因を思い出して思わずため息を吐き出した。
「起こした?」
そう広くない部屋だ、当然聞こえたのだろう。エリスが振り返って尋ねるのに起き上がって答える。
「仕事?」
「ええ。今帰ってきたの。バーランド教授の手伝いだったんだけど、あの人ちょっと酷すぎるわ。学生の私たちにいきなり昇華陣組ませようとするのよ? 信じられる?」
「あの教授なら考えられるな」
「考えられてもいきなり「やれ」って一言命令されるのよ!? ありえないわ。準備くらいさせて欲しいわよ、まったく」
文句を言ってはいるが、おそらくきちんと対応できただろう。あのバーランド教授はできない学生に無理なことは命令しない人だ。
「ダグラスは陣を組むのは得意だったな」
「ええ、すごいわよ。同期であんな綺麗な陣はなかなか見られないと思うわ」
にこやかにそう話すエリスを視界に入れるたびにイライラが募る。でも、それはエリスのせいではないのだ。
「随分と仲良くなったんだな」
今期の成績が発表されたときには渋っていたくせに。いや、一緒に仕事をするようになって、ダグラスの良いところなんかが見えてきた結果といえなくもないが。それでも、笑顔で奴の話をする彼女を腹立たしいと思うのは当然ではないか。
その立ち居地はずっと俺の場所だった。
「ええ、おかげさまでなんとかね。レイモンドだって、ジェニファーと仲良くしているじゃない」
そう、今期三位の俺は四位のジェニファーと組んでいる。
「おかげさまでな」
仲良くなどしたくはない。ないが、どうしても仕事になれば仲良くしなければならない。パーティーを組むというのはそういうことだ。
不貞腐れ気味にそう言い返すと「そう」と返事があり、本を戻す作業に戻られた。他に世間話をするでもなく、ただ沈黙が落ちる。
今期の組み合わせが発表されてからずっとこんな感じだ。気まずいというより、どうしたらいいのか分からないというのが本音だ。
だって、このイライラをどう言えばいいのだ。
彼女の隣にいられないのは自分のせいだと自覚があるだけに、どうにもならない心の叫びは今日も同じところに停滞する。気づかれないように大きく息を吐き出す。いつも通りにしたらいい。ただそれだけだ。
少し冷静になって本の戻し場所を探すエリスを見る。
今期はパーティーを組んでいないので、髪を束ねたその後ろ姿は結構久しぶりだとふと思う。仕事終わりにさらりと髪を解く姿が好きだが、それを見ることはしばらくないのだ。いや、もしかしたらずっとないという可能性もある。
「………」
立ち上がって後ろに回り、まとめているリボンを引いて解く。
「何してるの?」
本を戻しつつ怪訝そうにこちらを振り返る。伸ばしている手を本棚に縫いとめて、もう一方で抱きしめた。
「レイモンド?」
「なんで、俺じゃないんだろう」
「はい?」
何を言っているのかまったくわからないだろうなと思ったが、それが本心だ。
どうして、この背中を見ているのは俺じゃないのか。
情けなくて、苛立って、切なくて、腹が立つ。
「レイモンド、苦しいから放して」
呆れたようなため息に心臓のあたりがちくりとする。
解放するとやはり呆れている顔がある。
「私がダグラスと組んでいるのはレイモンドが三位だからでしょう?」
何を当たり前なことをぐだぐだ言っているのだと、そんな声にならない声が聞こえる。
エリスにとって俺はその程度でしかない。
でも、俺にとってエリスは違う。
じっと見つめ返すが平然と受け止められ、それどころかどうしたんだと不思議そうだ。
「エリス。好きだ」
「そう、私も好きよ」
言葉にしても同じ事。だからなんだとその瞳が告げる。
本当にわからないのだろうか。
ずっと一緒にいたのに。
どうして、わからないのだろうか。
俺の伝え方が足りないのか?
でも、愛しているといったところで、同じように返されることは実践済みだ。
他に伝える方法など知らないのに。
「レイモンド、どいて。邪魔よ」
かなり近い距離で話をしているため、本が戻せないという意味だったのだろうが、追い詰められている俺にはまったく違って聞こえた。
「そうか」
エリスにとって、俺は進路をさまたげるものでしかないのかもしれない。言葉にしても態度に出しても、きっとその程度なのかもしれない。
「レイ? どうしたの?」
どうしたはないだろう。
「エリスのせいだ」
「私の」
尋ね返される前にその口を塞いだ。
重量のある本が落ちる音がして、わずかにある後ろへの余白に逃げようとする。それを追いかけて本棚に押さえつけた。
「ここは俺のだ」
「ちょっと、レイモ…」
宣言だけしてもう一度塞ぐ。
どうせ返ってくるのは不思議そうに尋ねてくる言葉だけなのだから。
柔らかく暖かな感触を堪能する余裕などなく、ただ想いをぶつけるだけの行為だった。
苦しそうに小さく声が漏れ、ようやく我に返る。
ゆっくり離れると酸素を求めて大きく息をついた。ぐったりと本棚に寄りかかって息を整える姿を見ていたが、ふいに疑問が浮かぶ。
「どうして抵抗しないんだ?」
逃げようとしたくせに、抵抗はしなかった。できなかったのか、それとも…。
淡い期待が脳裏を掠めるが、深呼吸をしてまっすぐ見上げてくる瞳にそうではないと瞬時に悟る。
「レイモンドはやめると思ったもの」
これ以上は先に進まない。ならば好きなようにさせてやるかと、そういうことのようだ。
返ってきた答えに、どこか暗い場所へと突き落とされた気分だ。
「ごめん」
エリスにとって俺はやはりそんなものなのだ。
空気のようにあしらう事のできる、軽い存在。
「もう、しないから」
一歩下がり視線を落とすと本とリボンが落ちている。それを拾って差し出すが、どうしても顔が見れない。そこにある表情をもう一度確認する勇気は持ち合わせていなかった。
エリスはその本とリボンを受け取るとくるりと背を向け、一つの場所へと本を戻す。何事もなかったようなその動作に、妙な脱力感が体を襲う。
足取り重くソファーに戻る。
俺は、何をしたかったのだろう。
そんな疑問すら浮かんでくる。
「レイモンド」
「なに」
ぼすりと体を沈めて返事をすると、エリスが目の前にまできた。その制服の裾を見つめていると盛大なため息が落とされる。
「あなたって、本当に駄目ね」
グサリと心臓に言葉が突き立つ音がする。
どうしてトドメまで刺すのだろうか。
「言われなくても知ってる」
鬱々と答えるともう一つ呆れのため息が落ちる。
「はぁ。本っ当に、分かってないんだから」
言葉と同時に片足を挟んでエリスがソファーに乗り上げてきた。突然のことに思わず見上げるが、ふわりと抱き込まれて顔を見ることは叶わなかった。
「エリス?」
「私が成績を落とすわけがないのは知ってるでしょう?」
頭の上から聞こえる非難の声に「ごめん」としか言えない。エリスが頭がいいのは知っている。追い越すことはできないだろうけど、二番目になら収まることができる。そう宣言したこともあった。
「謝るくらいなら成績上げなさい。来期は絶対に二位になるのよ」
「努力するよ」
今期二位のダグラスに勝てるかどうかはわからない。いつも僅差でなんとか二位にいたのだから。それに、エリスは俺じゃなくてもいいのだろうし。仕事をする上ではダグラスのほうが相性がいいのではとも思う。
沈みっぱなしの気持ちのままそう答えたのが悪かったのか、エリスが頭を締め付けてきた。
「努力じゃなくて、絶対に二位になりなさい!」
ぎりぎりと力を入れて頭を締め付ける力は半端じゃなかった。
「エリス! い、痛いって!」
「レイモンドが二位じゃないと困るじゃない」
「え?」
発せられた言葉に頭の痛みすら忘れた。
俺の頭に腕を絡ませたまま、エリスはまた盛大なため息をつく。
「どうして隣にいないのよ。いつもレイモンドが二位だったのに、どうして今期は三位なのよ。私への当て付けなわけ? いつからレイモンドはそんなに偉くなったのよ」
当て付けで三位になどなるわけないが、それよりも、今の言葉はなんだろう。
「エリス。俺が良かった?」
ダグラスよりも。
「当たり前でしょう。それとも何? レイモンドはジェニファーのほうが良かった?」
そんなわけない。
なんだろう。これは。
言葉を理解していくのと、じりじりと歓喜が湧き上がってくるのは同時だった。
「レイモンド。返事は?」
少しだけイラついている声に、思わず笑う。
柔らかい体を抱き返して返事をする。
「俺もエリスがいい。欲しいのはエリスだけだ」
「そう。よかった。私もよ」
くすりと笑う気配がしてそっと抱き返してくれる。
もう、いいと思った。
エリスが例え振り向いてくれなくても、とりあえずは特別な地位にはいるらしいことがわかっただけでもいいとしよう。
「来期は絶対に二位になるのよ」
「仰せのままに」
エリスは元々高嶺の花なのだ。この手に落ちることはないだろう。
ゆっくりと名残惜しく体を離しようやく顔を上げると、そこにはやはり不思議そうにこちらを覗き込む目がある。
「どうしてわからないのかしら」
「なに?」
「いいの。なんでもないわ」
「?」
どこか諦めたようにそう告げると、未練もなくすっと立ち上がった。
「レイモンドは学科は終わったの?」
「ああ、今日は終わり」
「そう。じゃあ、また明日ね」
「うん」
ひらひらと手を振って扉に向かったが、ぴたりと止まって引き返してきた。
「そうだった、忘れるところだった」
「?」
何を忘れたのだろうとあたりを見回すが、これといって何かあるわけでもない。
「うわ!」
突然体を倒され、驚いて起き上がろうとすると体の上にエリスがいる。
「え、エリス」
エリスの顔を確認したときには焦点が合わないほど近づかれていた。
柔らかく暖かいものが唇に当たり、その次にもっと柔らかく熱いものが侵入してきた。
「んん!」
驚いて声を出すが口を塞がれているのだから声にはならない。するりと撫でてすぐに離れていったそれに、思考が吹っ飛んだ。
「次は、途中でやめたら怒るからね」
「は?」
思考回路が焼き切れている状態で、何を言われているのかわからなかった。言葉をなくした俺を見て満足したように微笑むと、「じゃあね」と言って去っていった。
俺が正気を取り戻したのは随分たってからだったと思う。
意図せずとも反芻してしまい、たまらず口元を覆うと顔が熱いのがわかる。
「明日、大丈夫か、俺」
考えることは他にたくさんある気がするが、今はそれどころではない。
俺の思考回路は同じところをぐるぐると回り、しばらく使い物になりそうにない。
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