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その時に、腕枕ってのは腕に直接頭を乗っけるもんじゃない。
と、断言したところ、友人に「え!?そうなの!?」と驚かれたことからだった。うん。
そこからどう発展したものやら、下には全く関係ない官能小説もどきが置いてあります。
キャラ設定はほぼなし。
んー。ま、指定するほどでもないと思うが一応お子様は読んではいけません。
といっても、多分、読んでも差し支えない。
あからさまな表現は極力省いたし。
私の感覚的にはPG12くらいだと思う。
絶対に想像力+オトナの解釈がないとわかんないだろう。これ。(それじゃ官能小説じゃないよ!!)
ふと目が覚めた。
部屋の中は夜の闇ではなく、青白さを感じる朝の闇だ。真夜中の静けさよりももっと静かな、おそらく世界で一番静かな時。
太陽の気配はまだなく、もう少しだけ眠りにつくことを誰も咎めたりはしない。
ほうっと息を吐き出して、掛けている布を肩まで引き上げ、少し冷たい場所へと体を寄せる。手を伸ばすと滑らかでひんやりとした感触がとても気持ちいい。
いつも起きる時間より早く目が覚めたのだから、もう一度睡魔が来るのにそう時間はかからない。
静かな朝の闇が太陽に払拭されるまでの束の間の微睡み。
しかしその、うとうとした意識がふいに呼び戻される。
寝ているベッドの、背を向けている場所が沈み込んだのがわかった。
自分以外の誰かがベッドの上にいるのだと認識する前に、掛け布がめくられ、背後にひんやりとした空気と共に侵入し、枕と首の隙間と腰に腕がまわされた。
ぼんやりと起きた意識と鈍い思考でも、それが誰かはっきりとわかる。
「アルフレッド」
「ん。ただいま」
後頭部のやや上からする掠れた声を聞いて、やはりそうかともう一度寝ることにする。
「おかえりなさい」
じんわりと暖かくなる背中が心地よく、落ちかける意識がまだあるうちに挨拶を返す。
「イキシア」
呆れたような含みを持つ声に、眠りに傾いていた意識が少しだけ覚醒に傾く。どうやら何か用事があるらしいと、日頃に染み付いた声音に無意識にそう思い問う。
「なに?」
問えばひとつ溜息が落ち、腰に回されている腕に力が加わる。それにより一層彼の温もりが感じられ、一気に自分がどういう状況になっているのかを理解する。
「アルフレッド」
もう一度声をかけると、後頭部でくすくすと笑う気配がする。
それと同時に足の間に彼の足が侵入する。その侵入から逃れようと足を曲げて逃げようと試みるが、それよりも早く膝上に彼の足が置かれ膝下を絡め取られる。下になっているほうの足が完全に捉えられ動かす事ができない。
まだ完全に起ききれていない頭にようやく「逃げる」という行動を思いつくが、すでに体半分を押し付けるように体重を乗せられているため身動きも取れない。
ようやくじたばたし始めたのを面白がるように、腰にあった手がするりと胸の下までを撫で上げ、やんわりと押し上げるように包み込む。
「あ、あの、あ、アルフ、レッド」
たったそれだけで一気に体温が上昇し、それにより完全に覚醒した。
完全に目は覚めたが思考は混乱したままだ。そういえば、彼は今この屋敷に居ないはずだ。それが何故ここにいるのか。もしかしたら夢かとも混乱した意識が現実から逃げるように拡散していく。
「手伝って欲しいんだ」
「て、手伝う?」
この状況で使われた言葉の意味が分からず鸚鵡返しに聞き返す。
「そう」
囁くような声と同時に、ちょうどお尻の辺りに硬いものを押し付けられる。
「え」
「触って」
それが何かを認識する前に摺りつけるような仕草で身体を動かした。
「え…と」
言葉と行動で示されたのだから、何を要求されているのかはっきりと理解している。理解はしているのに、何を言われているのかが分からない。いや、言葉の意味としては分かっている。そう、わかっている、のだ。
自分の中で消化された言葉の意味に、今度は身体が動かない。指を動かすことも、瞬きも、呼吸すらできなくなる。
息も止めた私とは対照的に、背後にいる彼は息を吐き出して手を動かした。
その動きにびくりと身体が反応する。
「大丈夫。痛くしない」
過剰反応する私にくすくすと笑いながら、胸にあった手が離れ、縮めている私の腕を辿り、その先にある固く握った手を捉える。拒否するように握られた手を宥めるように指で撫でた。
「嫌か? 俺には触れたくない?」
少し冷めた声で言われる言葉に首を振る。そんなことは絶対にない。考えるまでもなく断言できる。ただ、心と身体が突然の状況に素直に混乱していて、何をどうしていいのか分からなくなっているだけ。
混乱したまま熱くなる思考が彼の言葉で少しだけ落ち着き、ようやく息を吸い込む。
ゆっくりと答えを待つように撫でている手をそっと握り返す。無言の了承に対し後頭部に柔らかい感触と小さな音が届けられる。
手を取られ身体の後ろへと導かれる。少しだけ身体を離したその隙間にある、彼が言う触れて欲しいものがあった。
たどりついた一瞬、思わず手を引く。嫌悪ではなく、布越しでも明確な感触に純粋に驚いたのと、禁忌に触れるような本能的な畏怖だったのかもしれない。
恐る恐る触れてみる。その瞬間に後ろで溜息が落とされた。
触れてはみたが、そこからどうしていいのかわからない。形をなぞるように指先で辿ってみると、彼の呼吸が少しずつ大きく深くなる。
「もう少し強く」
しばらくそれを続けると注文が入る。
しかし、そこが男性の急所とされていることくらいは知っている。果たしてその注文に答えても本当に大丈夫なのかと逡巡していると、私の手の上から強さを教えるように彼の手が添えられる。
「焦らしてる?」
そんなつもりは毛頭ない。
教えられた強さで包むように形をなぞると、今度は彼がびくりと身体を震わせた。
「痛い?」
強かったかと手を引こうとすると、その上から押さえられる。
「大丈夫。続けて」
そう言われたがやはり躊躇ってしまう。
「イキシア」
焦れたように名を呼ばれるのに、少し力を加減しつつ同じように繰り返した。
寝るための服装であるため布地は薄いものだ。そこが熱を持っているのがよく分かる。一度目よりもしっかりと手に収めたそれは、とても質量のあるものであると認識する。どうなっているものなのか、それがどんどん増しているように感じる。
後ろ手で触れているためいまいち収まりが悪い。時々触れ方を変えると、後頭部で短く息が吐き出されたり止まったりする。私に近い先端部分に触れると喉の奥で声が詰まる音がする。
「痛い?」
その音が苦しそうで、もしかしたら痛いのを耐えているのではと思ってしまう。大怪我をしても痛いとは絶対に言わない人であるだけに不安が増し尋ねた。
「…ん」
ひっそりと返ってきた声に手を止める。
「痛いの?」
「大丈夫だ」
その言葉の信用性がどれほどないか理解していないだろう。
これは一言いわねばと手を放すとすぐに元の場所に戻される。
「アルフレッド」
「痛くない、むしろ」
笑いを含んだ声と一緒に離れていた身体を密着させられる。
「興奮する」
その単語と一緒に吐き出される吐息に苦しげな息遣いの意味を知り、先ほどまであった心配と不安が無くなった。代わりにやってきた理解が思考を停止させる。
「続けて」
手を上から押さえて続きを促してくる。それに従うと同じように溜息が落とされる。
それは全く先ほどと同じ音であるはずなのに、理解したとたんに別のもののように感じる。短く吐き出された吐息に思わず身をすくませた。
それと同時に後ろから息だけの笑いが漏れる。
どうして笑われたのかを考えるより先に動悸が早くなる。それは後ろにいる彼にこの音が聞こえるのではないかと思えるほど激しい。あまりに激しく動く心臓に体がついていかない。苦しくてゆっくり大きく呼吸をするが、その音が震えているのが自分でもわかる。
無駄な緊張と上手くいかない呼吸に意識が向かって、動かす手に力が入った。
「…ふっ…」
短く落とされた声にわけの分からない焦燥で全身が汗ばむ。
「イキシア」
耳に届く切ない声にざわりと肌が撫でられるような感覚に陥る。
「興奮してる?」
「!」
止まったままの考えの核心を衝く言葉に絶句する。
その絶句に笑いながら、意図しているのかいないのか、短くはっと息が吐き出される。
恥ずかしさに泣きたくなってきたのを察したのか、弱くなった手を止められた。
「イキシア。もう、いい」
切なげに伝わる声は掠れている。
手を放すように促され、どうやら手伝いはこれで終わりのようだと少し安堵する。
この後はどうしたらいいのだろうとじっとしていると、それまで絡めていた足を解き、ごそごそと何やら彼が動く。
ようやく解放されるのかと思っていたのだが、逆に肩を強く抱き寄せられ、彼の顔が私の後頭部に押し付けられたようだった。
「……っ…」
強く抱きこまれ、彼が何かを耐えるように声を押さえた。
どうしたのかと声をかけようとしたが、規則的に動く音に重なるように、今まで聞こえていなかった音に気がつく。
「アル、フレッド」
「ん」
何をしているのかと口にしかけてやめた。動いている場所は先ほどまで私が触っていた場所だ。何が行われているのかを漠然と想像し、密やかに短く呼吸する音と濡れた音に否応なく羞恥心を掻き立てられる。
熱くなっている私よりも体温が高くなる彼。
徐々に強くなる肩を掴む手。
声を殺す音と息を飲む音。
背中に感じる全ての濃厚すぎる空気に息が詰まる。
息苦しくて目の前にある彼の袖を握り締めた。
「…はっ…イキシア…っ」
ぐっと力が入り、悲鳴を潰したように名を呼び、終わった。
その終わりが何かは分からないが、直後に呼吸が深くなる。深呼吸を繰り返し落ち着きを取り戻しはじめた様子だ。しかし、それが分かっていても動けなかった。
私の中のこの熱をどうしたらいいのか。
緊張したままの身体をどうしたらいいのか。
目が覚めてから怒涛のように押し寄せてくる未知の体験に、許容量はもう限界に達していて、思考も感情も熱をもって真っ白になっている。
肩に食い込んでいた手がゆっくりと解け、肩を撫でる。
その手がゆっくりと首筋を辿ってざわりと肌が粟立つ。その手から逃げようと身体を前に傾けると、それを追いかけるように柔らかな感触が首の後ろに押し付けられ、しっとりと吸い付かれたのが分かった。
「イキシア」
「………」
今まで一度も聞いた事のないあまりに扇情的な声に、心臓がどくりと音を立て、思考が焼き切れた。
ふと目が覚めた。
太陽が昇りきる前の明るい空をぼんやりと視界に入れて、ああ、朝がきたのだとほうっと息を吐き出した。
力を入れて寝ていたようで、体が痺れるような感覚がある。
妙なだるさを感じ仰向けになって、息を吐き出す。意を決して窓とは逆側に視線をやる。
そこにはもちろん誰も居らず、もう一度安堵の溜息を吐き出す。
「ああ、でも」
次に会ったらどんな顔をしたらいいのか。まともに顔など見れるのか。
自問自答し、大丈夫だと励まし、なかったことにしろと命令する。
次に会えばまたきっと、あの冷たい顔が凍てつく瞳を向けて、呆れたように名を呼ぶのだ。
ぼんやりと天井を見上げてそんな事を思ったのがまずかった。
最後に呼ばれた声をにわかに思い出し、顔が熱くなる。
「うううううう」
一人で悶絶してるといつものようにコンコンと扉が叩かれた。